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母を思う人

今日病院に行った帰り、高血圧症の服薬を始めることになって、私は落ち込んでいた。
その医院の玄関を見ると、足取り重く彼女がドアを開けるところだった。
彼女は、その医院の奥様。
私は彼女とちょとした知り合いだった。

「あら、久し振り」
お互いに声を掛け合ったが、彼女もどことなく元気がなさそうだった。
私もきっとそうだったのだろう。
「元気でしょう?」
と彼女から言葉を返してくれた。

「ううん。わたし、高血圧になって…」
「あら、同じよ。私も1週間前から飲んでいるのよ。
 子ども達のためにも、お互い健康でいなくちゃね。
 はやく診てもらって、治療してもらって。」

そして、彼女は、彼女のおかあさんの話をしてくれた。
おかあさんも高血圧の治療をしておられたらしい。
自宅裏の畑に行って、一時間もたたないうちに彼女が畑に行ってみたら、おかあさんは倒れておられたらしい。
「あまりに突然のことだったので、
 初めはおかあさんがふざけて寝たふりをしていると思ったくらいなの。」
と彼女は、ふっと息を吐くようにしていった。
ご主人は、即死に近い状態の脳卒中だったと彼女に告げられたとか。
「一日も看病していないのよ。つらくてね。一年もたつのに、今でも、思いだすとね…」
と言って彼女は涙を流した。

「おかあさんの近くにいてあげられて、おかあさん幸せだったと思う…」
私には、これしか言えなかった。
母を思って涙する彼女に、私の心も寄り添っていくように感じた。
彼女の悲しさが、自分のことのようだった。

母を思う彼女にあって、私も、母を思った。
いつも、母と別れるときに、あと何度会えるかなと考えてしまう。
また会えるといいなと…

by hanaatushin | 2005-07-05 20:15 | ひと・人・ひと