たった一人

5月末の土曜日、長男が赴任地に出発した。
といっても、これまでは東京にいた。
その間はいつも誰かと空間を共有していたと思う。
近くに友達もいたし。
けれども、土曜日、東京からまっすぐに行ってしまった。
私達に会いにも来ずに…。
赴任地では、部屋探しも何もかも自分一人でしている。

赴任地には、息子の知り合いは誰一人としていない。
もちろん、私の知り合いも…。
新規採用はたった一人。
会社のメンバーとはかなり年の差があるらしい。

新社会人たった一人、社会に飛び込んで、やっていけるのだろうか。
もともと、息子は人との関わりが上手な方ではない。
何か面白いことを言って受けをねらったりすることはできない。
自分の生活でさえ保てるかどうかも心配しなければならない、自立できていない息子である。

このところ、息子のホームページには、暗雲が立ちこめている。
そこからは、明るい言葉も希望のかけらも見いだせない。
だから、言ったのに。地元に就職した方がいいって…。
のど元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

二日前の℡で、空元気を出したようなむやみに明るい声で、
「俺は、3年計画のプロジェクトに加わるんだよ。これから始まるんだ。1年目は出張が多いらしいよ、2年目からは…。だから、俺、一つの仕事が終わるまでは頑張ってみるよ。」
と言っていた息子。

自分が全く知らない土地に、ぽっと一人投げだされたらどうだろう。
そう考えただけで、私は背中が寒くなる。
ひとりぼっちがたまらなく怖い。
だけど、尻込みもせずに行った息子は、まあ頼もしい方じゃじゃない?

遠いと言ったって、日本語も通じるし、帰ってきたければ飛行機でその日の内に我が家までたどり着ける距離だもの。

どこにだって親切な人も優しい人もお節介もいるに違いないから、きっと誰かに力を借りて何とかやっていけるような気がする。初めはみんな知らない間柄でも、時間をかけて親交が深まっていくものだと思うから。

きっと大丈夫、きっとやれる、そう信じる。

後ろを見てもしょうがないし、これからを案じてもしょうがない。
いま遠くで一人孤軍奮闘しているその事を、安心しよう。
そうしよう。
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by hanaatushin | 2005-06-05 15:54 | つぶやき